岩手県

花巻おもちゃ美術館

岩手県花巻市の「花巻おもちゃ美術館」は木のおもちゃを中心とした様々な遊具で遊べる体験型ミュージアム。0歳から100歳まで多世代が交流できる施設です。

花巻おもちゃ美術館に行ってきた!木のおもちゃで遊べる体験型ミュージアム

岩手県花巻市の「花巻おもちゃ美術館」に行って来ました。大人も子供も楽しめるって本当? ナイトミュージアムやってるの? スタッフさん直伝の楽しみ方をお伝えします。


岩手県花巻市の「花巻おもちゃ美術館」は、木のおもちゃを中心に様々な遊具で遊べる体験型ミュージアム。

岩手県産の広葉樹をふんだんに使った館内では、新しい遊びから懐かしい遊びまで、沢山の遊びが体験できます。

岩手の恵みをテーマにした収穫ごっこが楽しめるスペースがあったり、

広大なおままごとスペースもあります!

岩手にちなんだ展示は、小さな子供だけでなく、大人でも楽しめる仕掛けが施されています。

世界中のおもちゃが揃っていて、見ているだけでワクワクしますね!

金曜の夜にはナイトミュージアムを実施している、めずらしいおもちゃ美術館なんです!

今回は館長の平野さんと、スタッフの玉山さんにお話を伺いました。

スタッフの玉山さん

 

懐かしの遊びから新しい遊びまで、0歳から100歳まで楽しめる

花巻おもちゃ美術館は、東京にある「東京おもちゃ美術館」の姉妹館なんです。貯蔵されているおもちゃは全て東京おもちゃ美術館の監修を受けています。

東京おもちゃ美術館とは?

「人間が初めて出会う芸術は、おもちゃである」という考えた方をもとに、体験型ミュージアムとして東京都に開館。見るだけでなく、実際におもちゃに触って遊べる、というのが特徴です。遊びながら木の魅力を伝え、木のファンになってもらう「木育」の普及を重点的に行なっています。

東京おもちゃ美術館公式サイト:
http://goodtoy.org/ttm/

選び抜かれた世界のおもちゃが大集合

こちらは世界中から集まった「グッドトイ」のコーナーです。

グッドトイとは、東京おもちゃ美術館を運営している「芸術と遊び創造協会」が、世界中のおもちゃから選びぬいたおもちゃです。もちろん、展示のおもちゃで思う存分遊んで頂けますよ!

こういうおもちゃって、質がいいぶん結構なお値段がするんですよね……。こうして色々試せるのはありがたいです。

 

グッドトイ以外にも、おもわず手に取りたくなるようなおもちゃが沢山揃っています。

大人が見てもかわいいおもちゃばかり。インテリアにもできてしまいそうですね。

 

大人も子供も一緒に遊べる「ゲームのもり」

おもちゃ美術館というくらいだし、大人が遊べるものはない…… なんてことはありません!

ここ「ゲームのもり」は大人も子供も楽しめるボードゲームが、たくさん揃っています。遊び方が分からない場合でも、スタッフさんに質問すれば丁寧に教えてもらえますよ。

岩手といえば、これ! わんこそばを模したオセロも人気でした。

みんなが知っている遊びに岩手っぽさを出して、かつオシャレにアレンジされているのがいいですね。

 

岩手の特産品が収穫し放題

さて、ここからが「体験型ミュージアム」の本領発揮。花巻おもちゃ美術館は岩手の特産物にちなんだ遊びがたくさん詰まっています。これ、なんだと思いますか……?

階段に穴……? よく見ると、にんじんが植えてあリます。

なんと収穫可能な畑なんです! 花巻では斜面を利用した棚田が有名。畑も段々を活用しているんですね。

バーベキューコーナーもあるので、収穫した野菜をお料理できます。思い思いの遊び方で楽しんでくださいね。

 

畑以外にも収穫できるものがあります。

花巻の大迫町は、ぶどうが名産でワインづくりもしているんですよ。このおもちゃのぶどうは、ひとつひとつがゴムで繋がっていて、子供に優しいんです。

 

キノコも生えているんですよ。マグネットでついているので「ぶちっ」というもぎり感が味わえます。

 

続いて、「ひっつきむしのもり」

なんと、屋内に白樺の森があります。よくみると木に穴があいていますね。

先端にマグネットがついた棒を近づけると……

ひっつきむしが出てきました! こういう仕掛けがあると、楽しくなりますね。

 

木材屋が本気を出した花巻おもちゃ美術館

それにしても、ここまで木にこだわっている施設も珍しいですね。

そうなんです! もともと、おもちゃ美術館全体の取り組みとして「木育」には力を入れているのですが、花巻おもちゃ美術館はとくにこだわってます。

木育とは

「子どもをはじめとするすべての人びとが、木とふれあい、木に学び、木と生きる」ことを学ぶ活動。近年新たに出来た考え方。

木材の事は館長の平野が詳しいので、説明を代わりますね。

実は花巻おもちゃ美術館は、小友木材という民間企業の運営なんです。木材の大半は、岩手県内で育ったものを使用していますし、施工も小友木材や、岩手県内の職人の方々が担っています。木材屋が本気で木育に挑戦しました!

岩手をテーマにしてるだけでなく、地場産業を活用されているわけですね。

これって、本物の虫食い跡ですか?

そうです。普段ならカットしてしまう虫食い跡も、あえて残して味わいにしているんです。実はこの木は、枕木に使われるはずだった木材なんですよ。

枕木って、あの線路に敷いてあるものですよね?

ええ。小友木材は以前、線路の枕木を取り扱う木材店だったんです。今は枕木ってコンクリートになってしまったので、眠っていた在庫を活用し、内装やおもちゃに生まれ変わらせました。

ここにタイルがあるでしょう。これも枕木から作ったものなんです。木材は種類によって触り心地、重さ、叩いた時の音、全てが違いますよ。

平野さんも、かなり木にお詳しいんですね

元々が、木材を扱う仕事でしたからね。僕は特にその辺に詳しくて、木の変態って呼ばれてます。

すごい褒め言葉ですね……

実は、この花巻おもちゃ美術館には隠し要素があるんですよ。

それは楽しそうですね! 何を探したらいいんですか?

漆です!

……うるし?

岩手県は漆の出荷量が日本一、ということで考案してみました。先ほど紹介した床のタイルやおもちゃの中に、漆で作られたものが隠れています。

漆(ウルシ材)とは

樹液は器の塗料として有名。「漆器」の塗料と言えばご存じの方も多いでしょう。木材は耐湿・耐水性に優れ、黄色いのが特徴。特性を生かし桶、寄木細工に使用されます。

お、おぉ…… ヒントをお願いします!

ヒントは”色”です! 漆の木は鮮やかな黄色をしているので、解りやすいと思います。床のタイルやおもちゃに、漆で作られたものがあるので探してみてください。

これは床のタイルだけでも相当な種類の木材が使われていますよね……?

このタイルだけでも30種類使っていますね。もちろん僕は見ただけで、全て何の木材かわかります。

さすが木の変態……、いや本業でいらっしゃいますね!

漆は床材やおもちゃなど、全部で4ヶ所に隠れています。ヒントや答えが知りたい時は、いつでもスタッフに聞いてくださいね。

 

懐かしの遊びが楽しめる、温泉街のもり&秘湯のもり

花巻地方といえば岩手を代表する温泉地なので、温泉街にちなんだエリアもあります。

このエリアは、温泉街ということで懐かしの遊びが集まっています。

こちらはコマのコーナー。台自体がコマの形をしていて、かわいいですね!

スマートボール、とみせかけて「スマートボール風ピタゴラスイッチ」

こういうギミックがあるものって、大人でもじっと見入ってしまいます。

そしてここはぜひ見て頂きたい! 木材屋が本気を出したけん玉ゾーンは、ただ数が並んでいるだけではありません。

様々な木材でけん玉が作られています。素材によって玉の重さが違い、扱いやすさが全く変わるのが面白いところ。玉が重いほうが扱いやすいんですよ。

続いては、ボールプールのコーナー「秘湯のもり」

こちらには木製ボールの温泉が広がっています。1万5千個のヒノキ材で出来ているので、肌触りが良くいい香りがしますよ。ただ……

いたた!足が痛きもちいい! いや、ちょっと痛い!

大人の足裏だと、いい感じにツボに入っちゃうんですよね。子供は全然平気みたいで、じゃぶじゃぶ入って楽しんでます。

 

マルカンビル大食堂のもり

ここまで紹介してきましたが、まだメジャーな遊びが出てないと思いませんか?

そう「おままごと」がまだ出てきてないんです。花巻おもちゃ美術館のおままごとは、スケールが違った!

定番のおままごとスペースだけでなく、隣室にダイニングも用意しています。道具や調理場はたくさんあるので、シェフが沢山いても安心です!

ごっこ遊びスペースだけで、この広さはなかなか見ないです! 小道具も色々置いてあって、本格的ですね。

このおままごとスペースは、花巻市民に愛されている食堂をイメージし、「​マルカンビル大食堂のもり」という名前がついています。

マルカンビルって、花巻おもちゃ美術館が入っているビルのことですよね?

そうです! 以前はデパートだった建物を蘇らせ、6Fは大食堂、1Fはアンテナショップとして活用しています。当館が入ったことにより、今まで以上にご家族で楽しんでもらえるようになりました。

 

市民の憩いの場なんですね。食堂メニューはどういったものがありますか? 看板メニューあれば教えてください。

一番インパクトが強いは「マルカンビル大食堂のソフトクリーム」ですね。スタッフの技術だけで超ロングソフトクリームを巻きあげるんですよ!

当館でも、積み木を使ってソフトクリームを作る遊びがあります。

現在の記録は55段なので、ぜひ記録更新にチャレンジしてみてくださいね。あ、50段超えたら写真の準備するので呼んでください!!

と勧めて頂いたので、作ってみますが……

 

20段が限界!

 

結構難しいんですが……、これを延々と積み上げる作業は、大人でもハマりますね。

そうですね。お子さまの付き添いのはずが、途中から親御さんが本気になっている姿もみかけます。

あ~ あるあるある。

 

ナイトミュージアムで、大人も楽しめるおもちゃ美術館

これだけ充実していると、大人も楽しめますね。でも、子供に混ざるのはちょっと勇気が居るかも……

そんな方のために、金曜の夜はナイトミュージアムを実施しています!

素敵ですね! やはり日中はお子さんに遠慮してしまうので、大人だけでゆっくり見れる時間があるのはうれしいです。

おかげ様でご好評いただいてます。ちょっと照明を落とし、壁にアートを飾って雰囲気も変えているんですよ。ボードゲームのスペースを拡張して、大人が楽しめる美術館に変えています。

他にも、先程ご紹介した「ソフトクリーム積み木の早積み大会」なんてイベントもやっているんですよ。いい大人が本気で遊べる環境ですので、ぜひのぞきに来てみてくださいね。

 

赤ちゃん連れでも安心して楽しめる

赤ちゃんや、歩きはじめのお子さんが遊べるような場所はありますか?

赤ちゃん木育のもり

もちろん、全てのスペースで遊んで頂けますが、赤ちゃんだけで静かに遊びたい場合は「赤ちゃん木育のもり」をお勧めしています。2歳未満のお子さまとその保護者だけのご利用に限っていますので、ゆっくり遊んでいただけますね。その他は、全年齢共通スペースになりますが「のりもののもり」も人気です。

のりもののもり滑り台

のりもののもりでは、岩手山をイメージした滑り台と、乗り物で遊べます。おいてある小さい電車は、銀河鉄道と、昔花巻を走っていた馬面電車がモデルです。

この滑り台、階段の傾斜が緩やかなので、ちいさな子供でも上りやすそうです!

あれ、この部屋のタイルって外れるんですね。

そうなんです。わざと床材が外れるように出来ているんですよ。木材を手に持ってみて、重さや質感の違いを楽しんでください。

赤ちゃんでも楽しめる仕掛けが、たくさん隠されていますね。

ベビーケアも安心してください。おむつ替えスペースや、お子さま用トイレなどしっかり整っています。

子供に教えてもらうこともある。

これだけの利用者がいると、いろんなタイプのお子さんが来られると思います。遊びを提供するうえで、日頃から心がけていらっしゃることがあれば、教えてください。

子供たちの発想力をつぶしてしまわないように、極力大人から「こう遊ぶべき」という口出しはしないようにしています。遊び方のレクチャーをするときも、お子さまの反応に合わせて、手を出しすぎないように、さりげなくやるように心がけてますね。

たしかに、大人って子供が決められた遊び方をしていないと「こうだよ!」と口を出したくなりがちですもんね。

そうなんです。でも、ひとつのおもちゃで一つの遊びという考え方でなく、自由に遊んでもらっていいんです。私たちも、子供に新しい遊び方を教えてもらうことがありますよ!

 

子供が使う施設だから、衛生管理は特に気を使っています。

最後に感染症対策についても教えて頂けますか?

小さなお子さまがいらっしゃる施設なので、衛生管理は特に気を使っていますね。

館内の至る所に、ウエットティッシュとアルコールを用意しています。お子さまが口に入れたおもちゃは、元の場所でなく専用の箱に入れてもらって、私たちで消毒して戻しています。

やはり、繊細なお子さん達が使われるものだから、徹底していますね。

そうですね! 赤ちゃんを連れても、安心して遊びに来て頂けるよう心がけています。

 

花巻おもちゃ美術館は入居ビルもおもしろい!

最後に、美術館が入居している「マルカンビル」についても触れさせてください。とても面白い背景があるんですよ。

マルカンビルとは?

かつて、花巻市には「マルカン百貨店」という百貨店がありました。長く市民に愛されていましたが、耐震基準や建物の老朽化などの問題に直面し、2016年6月に閉店。しかし高校生の署名活動をきっかけに、「大食堂を残そう!」という動きが発足します。その後、現在の花巻おもちゃ美術館の運営元である小友木材が経営を引継ぎ、別会社を設立。2017年に「マルカンビル」として復活したのです。

そんなマルカンビルの名物と言えば、これ!

6F 大食堂の高さ約25センチ、10段巻きソフトクリーム!

どうですか、この迫力。

もちろん中に芯は入っていません。完全に食堂スタッフさんのスキルのみで巻き上げられています。この職人芸はもはや芸術の域でしょう。

この超ロングソフトを、わり箸で食べるのが花巻流。

今回はソフトクリームを紹介しましたが、他にもナポリかつやマルカンラーメンなど「懐かしのデパート食堂」のメニューが今でも食べられます。どれもおいしそう……!!

マルカンビルに来たら、大食堂もセットで楽しみたいですね。

当日に限り再入場可能なので、大食堂でお昼を食べてまた遊びに戻ってくる過ごし方も大歓迎です!

地元の方だけでなく、旅行中の方も1日楽しんで頂けますよ。花巻に来たら、ぜひお立ち寄りくださいね!

 

花巻おもちゃ美術館の料金・アクセスなど

公式サイトhttps://www.hanamaki-toymuseum.com/

アクセス

岩手県花巻市上町6-2 マルカンビル2F

開館時間:10:00~16:00(最終入館は15:30まで)

※当日のチケットで再入館ができます。

休館日:毎週水曜日・年末年始

車でお越しの場合

花巻南インターチェンジから 車で15分

駐車場:駐車台数 200台 (駐車料金 30分100円)

電車でお越しの場合

・JR東北本線 花巻駅から 徒歩15分、車で5分
・JR東北新幹線 新花巻駅から 車で13分

料金

おとな(中学生以上) 800円
こども(1歳~小学生以下) 600円
1歳未満 無料
障がい者手帳をお持ちの方 無料

団体(15名以上)     :通常料金より100円引き

おとな平日半年パスポート :2,400円
こども平日半年パスポート :1,800円

 

取材・執筆:りお
編集:レクリム編集部