九州国立博物館
筑紫の森に囲まれた広大な九州国立博物館では「日本文化の形成をアジア史的観点から捉える」をコンセプトに、アジアとの文化交流史を伝えるため、時代ごとの様々な展示をしています。
九州国立博物館に行ってみた!日本の文化交流史ここにあり
九州国立博物館は、まるで時を超えてその目で歴史を見ているような没入感がありました!
目次
九州国立博物館へのアクセスは、博多駅から約1時間
太宰府天満宮の菖蒲池の奥にある、東京、奈良、京都に次ぐ4番目の国立博物館です。
九州国立博物館の位置する太宰府は日本古代史において、九州地方を統括する地、世界との交流の地でもある重要な拠点でした。
歴史上、アジアからの玄関口となった九州の特徴から「日本文化の形成をアジア史的観点から捉える」というコンセプトを掲げている博物館です。
太宰府天満宮から『虹のトンネル』という美しいアクセストンネルを抜けると、
森に囲まれた迫力の建造物、九州国立博物館が現れます。
九州国立博物館では、
対外文化交流の展示を鑑賞したり、
あじっぱでアジア各国の色、形、模様、においを五感で楽しんだり、
展示品にインスパイアされた、ここでしか手に入らない限定グッズにも出会えます!
そんな、九州国立博物館の魅力を広報の佐原さんに教えてもらいました!
緑豊な森に囲まれた九州国立博物館
それにしてもすごい迫力の建築ですね!
周囲の森を鏡のように反射する側面と、玄界灘の波をイメージした屋根の曲線が特徴です!取り囲む自然の環境もいいので、中には建物を見ることを目的にいらっしゃる方もいますね。
これってどれくらいの広さなんですか?
国際競技サイズのサッカーコートがすっぽりと入ってしまうくらいの大きさなんですよ。
すごいですね!スタジアム級じゃないですか!!
それに、この建物は収蔵品の保護のため免震構造が優れていて、ゴムのバネが地中に埋まってるんですよ。平成17年の福岡県西方沖地震(震度4)においても特段の影響がなかったほど強固な設計になってます。
それはもう日本の技術力の結晶ですね・・・!!
エントランスホールも天井まで吹き抜けていて、すごく開放感がありますね!
このエントランスホールには総合案内所をはじめ、無料体験展示室やショップなどがあります。
ホール内から外の景色が見えるので、それも相まって開放感を感じるでしょうね。夏には新緑、春には桜、秋には紅葉を眺めることもできるんです。
文化交流展示室(常設展示)
これから『文化交流展示室』にご案内します。俗にいう常設展示になるのですが、床面積約3900平方メートルもある広大な展示室で、旧石器時代から江戸時代にかけて時流に沿った5つのテーマに分かれています。
各テーマの時代ごとに小部屋が分かれていて、好きな分野をピンポイントで鑑賞してもボリュームのある鑑賞ができるほどです。
すごい広さですね・・・。なぜ他の博物館のように展示室の名前が常設展示室ではなく『文化交流展示室』なんですか?
九州国立博物館は「日本文化の形成をアジア史的観点から捉える」というコンセプトのもと、日本の通史や九州の地域史ではなく、アジアとの文化交流史を伝えるため『文化交流展示室』という名称にしているんです。
なるほど、そのような広く複雑なテーマにも対応するための展示室の広さでもあるのでしょうか。
おっしゃる通り文化交流史は広く複雑なテーマでして、「これを見れば文化交流史わかる!」といった展示でもありません。その複雑さゆえに常に展示替えをしながら、常時展示を行っています。
つまり、毎週のように小さな特別展が連続しているような集合体が文化交流展示で、何度来館しても、新鮮な文化交流史を鑑賞いただくことができます。
そういう博物館って、珍しいんじゃないですか?
はい、その代わりにぱっと見で全体的な展示の意図わかりにくいという部分もあるかもしれません。
そのために、文化交流展示室を訪れたらまず足を運んでいただきたいのが、中央のガイダンスエリアです。
ここでは映像と模型で文化交流展示室についてご案内し、この中央エリアからすべてのテーマにアクセスできます。5つのテーマごとに番号は振ってありますが、見学の順路は自由です。
なかなか特異で壮大な展示ですね。午前から来て気付いたら夕方になっているだなんてこともありそうです。
1. 縄文人、海へ
こちらは、3万5千年前~紀元前4世紀をテーマにしたエリアです。
大型動物を狩り、植物を採集し、遊動生活をおくっていた氷河期の旧石器時代を経て、温暖化し海が豊かな漁場となった縄文時代までの出土品を展示しています。土器や石器などの力強い造形品の数々が特徴的です。
2. 稲づくりから 国づくり
紀元前4世紀~紀元後7世紀は主に弥生時代ですね。この頃から大陸から多くの人々が渡来し、米作りや金属器が九州に伝わりました。王たちが墓に納めた多くの品々や、古墳時代に渡来した焼き物などを鑑賞することができます。
3.遣唐使の時代
こちらは7世紀~12世紀、奈良・平安時代を中心に展示しています。奈良時代の日本は唐の都長安に遣唐使を送り、先進的な国家制度や仏教を学び、国際色豊かな品々を持ち帰ったのです。大宰府はアジアとの外交・貿易の拠点として繫栄した。平安時代には、渡来の文化を基盤に、「仮名」に代表されるような日本独自の新しい文化が生まれました。
こちらは飛鳥時代・7世紀の観世音寺の国宝 梵鐘です。日本最古の梵鐘であり、数ある梵鐘のなかでも、屈指の美しさで知られる名鐘です。
4. アジアの海は日々これ交易
12世紀~16世紀、主に鎌倉時代から室町時代にかけて展示しています。武士が台頭したこの時代、アジア諸国の貿易商人たちは大海原をさかんに往来しました。
5. 丸くなった地球近づく西洋
16世紀 ~ 19世紀の室町時代の終わりから安土桃山時代は、ヨーロッパの大航海時代にあります。鉄砲やキリスト教が日本にもたらされ、日本からは銀や工芸品などが海を渡りました。戦乱が終わって社会が安定した江戸時代の文化を紹介しています。
概要だけでもボリュームたっぷりですね!これだけ文化交流史に関する収蔵品がたくさん展示されるなかで、博物館の『目玉』としている品ってどのようなものでしょうか?
そうですね、一つは王貞治氏寄贈の刀九州肥後同田貫上野介でしょうか。本館では随時展示替えを行っていますので、展示期間はHPでご確認いただきたいのですが、実際にご覧いただいた方の中には、その美しさに感銘を受けられた方もいらっしゃいます。
九博を彩る博多祇園山笠と特別展
ちなみにこの3階フロアは特別展を実施していて、年に3〜4回の頻度で開催しています。
どのような特別展が開催されているのでしょうか?
現在(2020年12月)準備中なのは特別展「奈良・中宮寺の国宝」です。ちなみにこれまでの入場者数第一位は『国宝 阿修羅展』でした。福岡県内から来られる方が多く、何回も来ているという方も増えてます。魅力的な展覧会を企画しているので、初めての方にも、リピーターの方にもおすすめです!
大人も子供も五感で楽しめる体験展示室 あじっぱ
この、あじっぱとは、なんでしょうか?
アジアの原っぱという意味で『あじっぱ』という名がついていて、こちらは体験展示室になります。日本の歴史の中で交流のあったアジア各国の色、形、模様、においを五感で楽しむ無料のコーナーです。
なるほど!アジアのマーケットを思わせるような外観ですね!
こちらでは、日本の歴史の中で主に交流があったアジアの伝統的な衣装や生活用品、おもちゃなどを紹介しています。
ムエタイのパンツなんかもあるんですね・・・!!!
今はコロナで休止していますが、伝統衣装着たり民族楽器に触れて音を鳴らしてみたりなど、触れるような体験もたくさんあるんです!
また『おうちdeあじっぱ』のブースでは、このようなお持ち帰りできるものを用意してまして、これらはご自由にお持ち帰りいただくことがます。
お子さんも楽しめますね!
大人も子供も『学ぶ』というよりもう少し砕けて『遊ぶ』ことで歴史に触れる機会になっていただけたらと思っています。
家族の方も全員で楽しめて嬉しいですね!
そんなあじっぱの中で一番人気の高い展示といえば、ズバリどれでしょうか?
あじっぱのなかでは《針聞書(写本)》室町時代の東洋医学書はよくご覧いただいています。「腹の虫の居所が悪い」という言葉が現代でも使われていますが、当時は腹の中で虫が悪さをすると伝えられていて、この写本にはそんな腹の虫が描かれています。鍼の打ち方などが記されていて、現在の針灸が日本で発展したことをしめす貴重な資料でもあります。
医学書だともっと生々しいような印象がありますが、これは現代のキャラクターとして全然通用しそうなくらい可愛いです。
可愛らしいですよね〜。なかなか可愛らしいのでミュージアムショップではこの『はらのむし』が実際にグッズとして販売されているんです。ぜひご覧になっていってください!
ミュージアムショップ
こちらがミュージアムショップです。九州国立博物館の展示品にちなんだ様々なグッズが販売されています。
たくさんありますねー!それでは、噂の『はらのむし』をピックアップさせてください!
こちらが『はらのむし』のフィギュアシリーズです。ここでしか買えないものなので、人気があります。
可愛い!!そして思ったよりオールスターズでした(笑)
先ほどの針聞書より抜粋した15種類がフィギュアになってるんです。
同じキャラクターを並べて見てください。気付きますか?
ん〜、少し腹の虫の居所が悪い気がしてきました。
それはきっと気のせいです(笑)これらの全てが手作りなので、ひとつひとつ微妙に姿形が違うんです。そこもまたこのフィギュアの魅力で人気の理由のひとつでもあります。
たしかにそうですね!尻尾の巻き方や顔の傾き方が違います!
九州国立博物館には日常のようで非日常な空間がありました
太宰府天満宮から虹のトンネルを抜けた先には、美しい流線形の屋根をした建物の側面に筑紫の森の木々が映り、周囲の自然に溶け込んだ博物館がありました。
日本文化の形成をアジア史的観点から捉えた文化交流展示室やあじっぱでは多様な歴史の息吹に触れることができ、まるで時を超えてその目で歴史を見ているような没入感をおぼえます。
周囲の自然から建造物、そして収蔵品の全てが生みなす日常のようで非日常な空間では、あっという間に時が流れてしまう、そんな体験をすることができました。
九州国立博物館ならではのイベントも各種開催しているので是非太宰府天満宮と合わせてお越しください!
九州国立博物館の施設情報
営業時間
9:30〜17:00(最終入館16:30)
※毎週金曜、土曜日の夜間開館等の情報はHPをご確認ください
休館日
月曜日(月曜日が祝日・振替休日の場合は翌日)
観覧料(文化交流展)
種別 | 料金 |
大人 | 700円 |
大学生 | 350円 |
・特別展は別料金となります(特別展の料金で文化交流展もご観覧いただけます)
アクセス:福岡県太宰府市石坂4-7-2
・車
太宰府ICまたは筑紫野ICから高雄交差点経由で約20分
・電車
福岡空港 → [地下鉄空港線6分] → 博多駅 → [JR鹿児島本線15分] → JR二日市駅 → [徒歩12分 / 西鉄バス6分] → 西鉄二日市駅 → [西鉄太宰府線5分] → 西鉄太宰府駅 → 九州国博物館
取材・執筆:KOH