江戸東京博物館
江戸東京博物館は、江戸・東京の歴史と文化を体感できる博物館。常設展では、実寸大の模型で江戸の街並みが再現されています。特別展は江戸・東京以外のテーマを扱うことも。
東京の歴史を遊ぶように学べる!江戸東京博物館の魅力を学芸員さんに聞いてきた
遊びながら学べる両国の観光スポット・江戸東京博物館。難しそうなイメージのある博物館ですが、その魅力と楽しみ方を学芸員さんに教えていただきました!
目次
「江戸東京博物館」、通称“江戸博”は都内の人気観光スポットのひとつです。場所はJR総武線両国駅から徒歩3分、大江戸線両国駅から徒歩1分。両国国技館のすぐ近くにあります。
江戸時代から現代までの歴史と文化をたっぷり味わえる博物館です。
館内には常設展と特別展があり、常設展は「江戸東京」がテーマ。精巧な模型や実寸大の展示で、江戸の街並みが再現されています。
展示を見るだけではなく、時代劇でよく見る乗物(のりもの)に乗ったり、天秤棒で荷物を担いだり、火消しの纏(まとい)を振ったりする体験ができます。楽しみながら学べる博物館です。
年に数回開催される特別展では、江戸東京だけではなくさまざまなテーマが取り上げられます。最近では「古代エジプト展」が話題を呼びましたね。
そんな江戸東京博物館の魅力を学芸員の早川さんに伺いました。
いきなりですが、博物館って難しそうなイメージがあります……。
江戸博は小学生のお子様でも楽しむことができます。難しい古文書などの資料もありますが、江戸時代の人たちがどんな暮らしをしていたのか、庶民の生活を体感できる施設なんです。歴史に疎くても充分に楽しめますよ。
早川さんに館内の常設展示室、図書室、ミュージアムショップを案内していただきました。
「江戸ゾーン」で江戸時代の街並みを体感
常設展示室は「江戸ゾーン」と「東京ゾーン」に分かれています。まずは「江戸ゾーン」から見ていきましょう。
こちらは江戸時代の日本橋を復元しています。幅が原寸、長さが当時の2分の1です。日本橋を渡ると、江戸にタイムスリップした気分を味わえますよ。
さっそくワクワクします!それにしても、館内はすごく広々していますね。
5階と6階が吹き抜けになった約9,000㎡の広い展示室が江戸博の特徴のひとつです。すべて見るのが大変な方は、「江戸ゾーン」だけでも充分に楽しめますよ。
これは江戸時代後期の歌舞伎座を再現した「中村座」です。中村一門は今もありますが、当時は幕府から許可をもらって中村一門が歌舞伎小屋を運営していました。
この模型は、日本橋を渡ったところの街並みです。写真右側の建物は三井越後屋さん。今も日本橋を渡ってすぐのところに三越がありますね。
越後屋とは今でいうデパートのことですか?
三井越後屋は呉服屋ですね。呉服とは絹の着物を指します。店先で反物を手に取って見ることができ、現金で販売する方法が画期的でした。
これは長屋を実寸大で再現したものです。長屋には複数の世帯が住み、井戸や便所、ゴミ捨て場は共同。台所は各部屋の土間にありました。
6畳くらいのワンルームですね。一人暮らし用でしょうか?
家族で住んでいた世帯もありましたよ。ちなみにこの部屋は大工さんが住んでいた設定です。
この棒は、火事のときに火消しの人が持っていた纏(まとい)です。見た目以上に重くて15キロもあるんですよ。実際に持つこともできます。
想像以上に重いです。火消しの人、すごいですね……。
こちらは江戸歌舞伎の代表的な演目である「助六」の舞台を再現したものです。
早川さんは歌舞伎がお好きですか?
うーん、誘われれば行くくらいですね。江戸博にはさまざまな学芸員がおりますが、私の専門は建築なんですよ。
みなさん専門分野が違うんですね。だからいろんな企画ができるのか……。
だんだん現代に近づいていく「東京ゾーン」
次に紹介するのは「東京ゾーン」。文明開化から現代までの東京を知ることができます。
こちらは明治10年頃の銀座の街並みを再現した模型です。
江戸時代の街並みとは随分変わってきましたね。
建物がレンガ造りになっていますし、大きな通りは舗装されているのでだいぶ印象が変わりますよね。でも、こちらも見てください。
レンガの建物に挟まれて、長屋と井戸が残っています。文明開化後もすべてが変わったわけではなく、江戸時代と変わらない生活を送っている人もいる。そんなストーリーを表現しています。
これは展望目的の塔として建てられた凌雲閣。浅草十二階とも呼ばれ、当時は東京で一番高い建物でした。浅草十二階を建てているときに、「大阪にもっと高い塔ができるらしい」との情報が入ってきて、負けないために上部を付け足したそうです。
途中から付け足せるものなんですね!
付け足したのが最上部の白い部分です。そこだけ木造なんですよ。浅草十二階は明治23年にできて、浅草のシンボルとして多くの人が集まる場所でした。
今はどうなっているのでしょうか?
残念ながら関東大震災により壊れてしまいました。
自動車だ。ずいぶん現代に近づいてきましたね。
これは円タクと呼ばれたものです。1円タクシーの略で、東京市内がどこでも1円だったんですよ。
東京がまだ「市」だった頃ですもんね。東京市って聞きなれないから違和感があります。
これは、昭和10年代くらいの下町の庶民住宅です。
さっき見た江戸時代の長屋とは随分違いますね!
江戸時代の長屋と大きく違うことは2つ。電灯があることと、板ガラスが使われていることです。それでもまだ水道はなかったんですよ。
これは昭和30年代半ば、高度経済成長期に建設された団地の一室を再現したものです。
建物の造りは私が住んでいる部屋とそんなに変わらないかも。
こちらには、1960年代から現代にかけて流行したものを展示しています。
90年代のスケルトンのマックだ。コギャルも。懐かしいです。
時代を知るにはさまざまな切り口がありますが住居や交通手段、衣服などを見ると時代の変遷がわかりやすいですよ。
図書室&映像ライブラリー
7階の図書室・映像ライブラリーは誰でも無料で利用できます。図書の貸出しはしていませんが、複写は可能なので調べものに最適です。
東京都域の歴史や文化にまつわる蔵書を揃えています。一般図書が多いですが、古くて手に入りにくい資料もありますよ。
図書館の郷土資料コーナーをかなり広くした感じですね。
もちろんお子様向けの本もたくさんあります。自由研究のために来るお子様もいらっしゃいますよ。司書が常駐しているので、調べたいテーマを相談していただければおすすめの本をご紹介できます。
画面をタッチすると映像ライブラリーを無料で見ることができます。
どんな動画が見られるんですか?
東京の歴史や文化を学べる動画です。テーマはさまざまで、たとえば江戸料理、明治の洋風建築、伝統芸能など。専門的なものですので、興味のある方向けですね。
ミュージアムショップ
こちらは1階にあるミュージアムショップです。
東京土産というよりは、江戸をイメージしたお土産ものを取り揃えています。クリアファイルや手ぬぐい、エコバッグなど江戸博オリジナルのグッズもありますよ。
どんなお土産が人気ですか?
コロナ禍前は海外から来られるお客様が多かったので、和柄や浮世絵モチーフなどいかにも“日本っぽい小物”が人気でした。現在は国内からのお客様中心なので、雑貨より食品が人気です。
こちらは江戸伝統の調味料。お醤油が一般的になる前に使われていた、梅や味噌で作った出汁つゆです。
特に人気なのは、相撲協会さんが出している「国技館カレー」と「国技館ハヤシ」です。国技館さんで買うのと同じ価格で販売しています。
学芸員がおすすめする江戸博の楽しみ方
最後に江戸博のおすすめの楽しみ方を教えてください!
常設展と特別展、どちらかだけを見てもいいですが、混雑を避けるために特別展の整理券をお渡ししているので、特別展の待ち時間に常設展を見ると無駄なくまわることができます(※チケットはそれぞれ必要)。
時間をめいいっぱい使えますね!
また、江戸博だけではなく、両国という街そのものを楽しむのもおすすめです。両国は江戸時代、盛り場だったんですよ。江戸博が両国にあるのも、そんな背景からです。両国は江戸博のほかにも美術館や博物館があるので、丸一日かけて文化施設をはしごするのもおすすめですよ。ぜひお待ちしております!
江戸東京博物館 施設詳細
○公式サイト https://www.edo-tokyo-museum.or.jp/
○開館時間・カレンダー
・開館時間 9:30~17:30
※入館は閉館の30分前まで
※団体の方はご予約が必要となりますのでお問い合わせください。(TEL:03-3626-9974)
・休館日 毎週月曜日(月曜が祝日または振替休日の場合はその翌日)、年末年始
※2021年度休館日カレンダーはこちら
○観覧料
・常設展(個人)
一般 600円
大学生・専門学校生 480円
高校生・中学生(都外)・65歳以上 300円
中学生(都内在学または在住)・小学生・未就学児童 無料
※20名以上の団体は団体料金となります。詳しくはこちら。
・特別展 開催中の特別展観覧料はこちらよりご確認ください。
○アクセス
住所:〒130-0015 東京都墨田区横網1-4-1
・JR総武線 両国駅西口下車 徒歩3分
・都営地下鉄大江戸線 両国駅(江戸東京博物館前) A3・A4出口 徒歩1分
取材・執筆:吉玉サキ