鹿児島

いおワールドかごしま水族館

錦江湾に面し、桜島を望む海のそばの水族館。鹿児島の海の生きものを中心に約500種3万点を展示。世界最大の魚・ジンベエザメやカツオ、キハダなどが群泳する黒潮大水槽や錦江湾とつながったイルカ水路など、鹿児島の海を伝える様々な展示を行っています。

【新種のエイでも注目】「いおワールドかごしま水族館」へ行ってみた

「いおワールドかごしま水族館」は南九州最大規模の水族館。鹿児島の海の生きものを中心に約500種3万点の展示をしています。展示内容やイベント、館内レストランなどを紹介します。


「いおワールドかごしま水族館」は南九州最大規模の水族館。鹿児島の海の生きものを中心に約500種3万点の展示をしています。色鮮やかで奥深い鹿児島の海の世界を探検しに出かけてみませんか?

見どころはというと……

水量は1500トンも!館内最大の水槽「黒潮大水槽」は、鹿児島の周辺を流れる黒潮の流れに沿って回遊するカツオやマグロ、ジンベエザメなどの魚が泳いでおり、圧巻の迫力です。

画像提供:いおワールドかごしま水族館

ちなみに、黒潮大水槽で1997年から展示しているエイ「トンガリサカタザメ」は、2020年に実は新種の「モノノケトンガリナカタザメ」というエイであることがわかり注目を浴びました。

「南西諸島の海」のコーナーは、色鮮やかな珊瑚礁の世界にうっとりします。

神秘的な「クラゲの回廊」に

色鮮やかでユニークな形をしたウミウシの展示。ウミウシの飼育は難しく、いおワールドかごしま水族館が日本で最初に常設展示を始めました。

画像提供:いおワールドかごしま水族館

錦江湾とつながった屋外の「イルカ水路」では、青空の下、イルカたちが飛び跳ねたり、遊んだりする様子が見られます。(青空イルカウォッチング・一日3回開催)

館内を巡って疲れたら、レストラン「水族館の果実堂」で錦江湾を眺めながら一休みできるのも魅力です。天文館で人気のフルーツパーラー「天文館果実堂」の姉妹店として、2021年7月1日にオープンしました。

より詳しい魅力や見どころを、館長の佐々木章さんに教えてもらいました。

南北に広がる多様な鹿児島の海を伝える

いおワールドかごしま水族館について教えてください。

コンセプトは「鹿児島の海を伝える」です。鹿児島の海って南北に600キロも広がっていますよね。そこには珊瑚礁の海、深海、干潟や岩礁、岩場など、多様な海の世界があります。亜熱帯から温帯域に生息する様々な魚種を見ることができます。

その魅力をお伝えして、普段は見ることがない海の中を知っていただけるきっかけとなる水族館となることを目指しております。

黒潮大水槽 黒潮の流れにのって回遊する10種類以上種類以上の魚たち

南西諸島のサンゴの海(画像提供:いおワールドかごしま水族館)

鹿児島の深海コーナー

地元漁師さんと連携したジンベエザメの展示

みなさんが楽しみに見に来る海の生き物はありますか?

ジンベエザメですね。世界最大の魚で、小さなお子さんにもよく名前を知られています。ジンベエザメは鹿児島の海に来ていることもあって「自分たち地元の海にも来ていることを知って欲しい」と、2000(平成12)年から展示をスタートしました。

黒潮大水槽の中を泳ぐジンベエザメ(画像提供:いおワールドかごしま水族館)

ジンベエザメは13メートル以上になると言われている大きい魚です。そのためうちの規模 では展示を続けるのが難しいので、ジンベエザメが5.5メートルになる前に海に還して、また新しく入れ替える方法を取っています。

ジンベエザメはどのように見つけているのですか?

鹿児島の海には5月~12月にかけてジンベエザメが定置網に入ることがあります。漁師さんにもご協力いただいて、ジンベエザメの確保を行っています。

現在(2021年8月時点)のジンベエザメは10代目。愛称はユウユウです

漁師さんと連携されているんですね。

私たち飼育員は海の生き物を紹介するにあたって、海に出かけることを大切にしています。そこにいる魚がどんな生活をしているのか知るために潜ったり、採集したり。また、漁師さんと一緒に船に乗って「今の時期にどんな魚が来る?」「どの位の水深に網を入れている?」「水温は何度くらい?」などと話をしながら収集をしています。しています。海で見たこと・聞いたこと・感じたことを展示して伝えることが飼育員の役割かなと思います。

「子どもたちが楽しく観察できるように」と、展示方法は様々な工夫を凝らしています

生態や行動を伝える「いるかの時間」

あと、イルカも子どもたちにとっては特別な存在ですよね。錦江湾(鹿児島湾)にもミナミハンドウイルカが生息していいます。、「いるかの時間」は、コンセプトの「鹿児島の海を伝える」につながる生き物として、また、イルカの生態や行動を感じてもらうプログラムです。

「青空イルカウォッチング」(一日3回開催)では、野生のイルカがする行動を紹介してくれます(画像提供:いおワールドかごしま水族館)

「いるかの時間」(一日3~4回)イルカの生態を体感してもらうことをコンセプトに運営 (画像提供:いおワールドかごしま水族館)

他の水族館にない特色ある展示方法として「イルカ水路」があります。錦江湾とつながっていて、かごしま水族館のイルカたちは館内のプールからイルカ水路に出て、自由に泳いだり、遊んだり、水路の中にいる生きものを追いかけたり、いろいろなことをして時間を過ごします。それも来館者に喜ばれているのかなあと思います。

イルカ水路

「あざらしの時間」も子どもたちに大人気(画像提供:いおワールドかごしま水族館)

飼育員たちが力を入れた企画展 年2~3回開催

企画展について教えてください。

企画展は年間2-3回ほど行っています。今開催しているのは特別企画展「奄美の宝」です。どの企画展も飼育員が自らテーマを選んで、会場の設計レイアウトを行い、解説も職員のオリジナルで用意しています。
※追記:9月は新型コロナウイルス対策のための休館があったため、特別企画展「奄美の宝」は2021年10月24日まで延長予定です。

特別企画展「奄美の宝」。奄美大島が世界自然登録されたのでタイムリーな企画です

奄美大島と徳之島はかつて陸続きだったため、共通する生き物も多くいます。一方、独自変化を遂げたものも

飼育員みんな自分の好きなものに力を入れがちなんですけど(笑)それだけではおさまらないくらいの生き物が鹿児島の海にはいて、まだまだ紹介しきれていないので、地道に一つひとつ展示をしていきたいですね。

鹿児島の海はクラゲの宝庫で、多種多様なクラゲが生息。「クラゲ回廊」では深海にいるかのような静かな雰囲気でクラゲの姿を観察できます

驚きと発見に満ちた海の世界

講座も開催されていますね?

小中学生を対象にした体験型の講座や、より深く学んでいただく大人向けの講座などいろいろやっております。(参考:https://ioworld.jp/workshop

画像提供:いおワールドかごしま水族館

最近は、コロナ禍でイベントはあまり多くないようですね。

イベントが少ないのは申し訳ないんですけれど、その分かえって水槽をじっくり見ていただけるので、新しい発見をしていただけるような気がします。普段気づかない小さな魚を見つけたり、カニが隠れているのを見つけたり、本来水族館って自分でそういう発見をできる場所だとも思っていて。

サンゴと岩礁の間に、よく見ると生き物たちが

獲物を捕らえるために、砂に擬態してじっとしているヒラメ

確かに! 見れば見るほどいろんなことに気がつきますよね。

イベントだと時間に追われてしまいますが、ないと時間に追われないので魚の模様、動きの発見をされているのかなと。じっくり水槽を見ながら親子で会話されていたりするのを見ると、私はうれしいですね。

ウミウシの常設展示コーナー。見れば見るほど色や形が面白い

TwitterやInstagram、facebook等での発信もされていますね。

以前はなかなか情報発信ができていなかったので。知ってもらう機会としてSNSやHPを今スタッフに頑張ってもらっています。写真って重要ですよね、ちゃんと伝えるには。

出かけにくい今、家にいながら黒潮大水槽を見られるライブカメラを配信中

 

有人潜水艇・はくよう

水族館の外に展示されているこの船について教えてください。

これは有人小潜水艇「はくよう」です。水深300メートルまで潜水可能な作業艇で、世界中の海で活躍してきました。

3人まで乗艇可能

錦江湾(鹿児島湾)でも潜水調査を行い、「たぎり」という海底からの火山性噴気現象を観察したり、海底の火山ガスが噴き出す周辺に生息する「サツマハオリムシ」を撮影したりしました。

サツマハオリムシ。硫化水素イオンを取り込んで生きる不思議な生物

艇長さんは鹿児島出身の方で2014(平成26)年まで巡洋していました。整備が大変な潜水艇ですが、一度も事故がなかったそうです。鹿児島の海をフィールドに活躍していた縁で、ここにおいていただけることになりました。今は技術が進み、無人調査船・ROVがあるので人が乗らなくても深い海に行けるようになりましたが、人の目で海の中を見るのはすごく大切なことと思います。

身近な海にいろんな生き物がいる

最後に伝えたいことはありますか?

身近なところにいろんな生き物たちが生活をしていることを、ぜひ知っていただければと思います。例えば8月頃ですと、喜入の海岸など鹿児島県内の海岸各地にウミガメが卵を産みにやってきたり、毎年1月から3月は、奄美大島周辺の海にはザトウクジラが繁殖、子育てのために回遊してきます。

普段私たちが生活している近くにすごい生き物がたくさんいます。それを知るきっかけとなるのが水族館や動物園だと思うので、ご利用いただければうれしいです。

タイヘイヨウアカボウモドキは1882年にオーストラリアで初めて発見され、近年までその生態は謎に包まれていました。完全な生態の骨格標本が見られるのは世界中でここだけ

「水族館の果実堂」でランチ&カフェ

館内を巡って疲れたら、2階にある「水族館の果実堂」で軽食&スイーツタイムがおすすめ。鹿児島の繁華街・天文館で人気のフルーツパーラー「天文館果実堂」の姉妹店として2021年7月1日にオープンしました。

大きな窓からは錦江湾と桜島フェリーがよく見えます

「果実堂」の名の通り、旬のフルーツを使ったパフェやフロート、フルーツサンドなどのスイーツメニューがたくさん。また、ホットサンドやうどん、カレー、お子様プレートなどの軽食系も充実しています。

フルーツサンド。さっぱりと滑らかな生クリームがフルーツの酸味と甘みを引き立てます

水族館限定の海色フルーツパフェ。自家製ヨーグルトジェラートはさっぱりと爽やかなおいしさ

営業時間はいおワールドかごしま水族館のページをご確認ください。

さいごに

順路に従って館内を見て行くと、最後の方に水槽に生き物が何も入っていない「沈黙の海」があります。多様で豊穣な鹿児島の海を守っていくためには何が必要なのか、時代や環境の変化は海にどのようは影響をもたらすのか、楽しく生き生きとした展示だけでなく、そんなことも一緒に問いかけてくれます。

鹿児島の多様で豊かな海とその生き物を伝えてくれる、いおワールドかごしま水族館。身近な海の生き物を知るひとつのきっかけとして、ぜひ訪れてみてください。

 

いおワールドかごしま水族館 施設詳細・アクセス

・公式サイト
http://ioworld.jp/

・住所
鹿児島県鹿児島市本港新町3-1

・電話番号
099-226-2233

・開館時間
9:30~18:00(入館は17:00まで)
※ゴールデンウィーク、夏休み期間の土日祝日、お盆などは21:00まで開館する『夜の水族館』を開催しています

・休館日
12月の第1月曜日~4日間
※年末・年始は通常通り営業

・入館料
大人(高校生以上):1,500円
小人(小・中学生):750円
幼児(4歳以上):350円
※お得な年間パスポートがあります。年二回以上行く人は年間パスポートの購入がおすすめ

・アクセス
JR鹿児島中央駅から「鹿児島駅前」行きの市電に乗車。約15分で到着する「水族館口」で下車。そこから徒歩約8分でたどり着きます

 

取材・執筆:ちえ