北海道

界 ポロト

星野リゾートが展開する温泉旅館ブランド「界」。界 ポロトは、ポロト湖畔に佇む、アイヌ文化の精神性や伝統を取り入れた温泉宿です。世界的にも珍しいモール温泉の白老温泉が魅力的。

界 ポロトに宿泊してきた!星野リゾートが手がける粋な温泉旅館ブランド

美しいポロト湖や民族共生象徴空間「ウポポイ」を楽しむ拠点の宿としても抜群の好立地。少し背伸びをして閑静な温泉旅館で至上のひと時を過ごし、会席料理と温泉を優雅に堪能する旅をしてきました。


星野リゾートが展開する温泉旅館ブランド「界」。

画像提供:界 ポロト

界 ポロトは、ポロト湖畔に佇む、アイヌ文化の精神性や伝統を取り入れた温泉宿です。世界的にも珍しいモール温泉の白老温泉が魅力的。

藤野さんから、界 ポロトの魅力を教えていただきました。

外観も内装もこだわり抜いた、アイヌ文化との共生を意識した設計


施設の随所に見られる白樺の木が特徴的ですよね。内装と調和していて、洗練された美しさを感じます。どういったコンセプトなのでしょう?


「アイヌ文化を尊重し、異なる民族との共生を体験できる」ことをコンセプトに、建築家の中村 拓志氏に設計を依頼しています。
建物はアイヌ文化伝承の地として維持されてきたポロトコタンから着想し、さらに敷地内にポロト湖を大胆に引き込むことによって、施設のどこにいてもポロト湖を身近に感じられる造りになっています。


界 ポロトは、施設全体を「コタン(アイヌの集落)」と位置づけ、ゲストルームを「チセ(家)」として全体を設計しています。廊下の壁が少し波打っているのは、チセに続く森の小道や、小川の流れをイメージしているためなんですよ。


モダンな建築の細部にもアイヌ文化の思想が盛り込まれているんですね。しかも見事に調和しているのがとても素敵です。

こだわりの内装は至るところで目にすることができます。部屋番号は光が作り出す陰影で表現。神は細部に宿ると言いますが、ディティールにこだわった装飾を探すのも、界 ポロト楽しむ一つのポイントなのかもしれません。


ここが界 ポロトのゲストルームです。アイヌ民族の暮らすチセから着想を得て設計し、壁紙やクッションにはアイヌ文様をモチーフにしたデザインを施してあります。
界では「ご当地部屋」を大事にしておりまして、地域の作家の方とコラボレーションして部屋全体をデザインしています。


これは素敵なお部屋ですね!ラグジュアリーな和洋室の中に、アイヌ文化の要素が絶妙に折衷していて、さらに眼前に広がるポロト湖の静謐な雰囲気も相まって特別感を感じます。


窓際のテーブルは、伝統的なチセの中心にあった四角い暖炉をイメージして配置しています。アイヌ民族は火を囲む習慣があり、火の「カムイ(神)」を位の高い神として崇めていたので、火を絶やすことなく大切に暮らしを営んでいました。
宿泊いただいた方にも、そうやって暖炉を囲んでゆっくりと語らっていただければと思います。


この場所、最高ですね!窓と同じ高さに揃えられたソファも、眼前に広がるポロト湖を眺めたり、背景にして写真を撮るのに最適です。

白老温泉についてもっと詳しく知る。「温泉いろは」に参加

特徴的な白老のモール温泉、そしてアイヌ民族と温泉の関わりを学ぶガイドツアー「温泉いろは」を、金城さんにご案内していただきました。


アイヌ民族は、温泉にも「ユコㇿカムイ(温泉の神)」が宿っていると考えていました。「ユコㇿカムイ、私を助けてください」と挨拶をしてからお湯に入るという伝承も残っているといいます。


イラスト、可愛すぎます……。
身体を癒す温泉の効能って、確かに不思議ですもんね。


同じく北海道のモール温泉である十勝川温泉では、エゾシカが温泉で傷を癒やしていたことにちなんで「薬の沼」とも呼ばれていたようですね。


白老のモール温泉は天然植物由来の腐植質の有機物を含有し、独特な茶褐色の湯が特徴的です。美肌の湯と呼ばれ、古い角質を落とし肌の新陳代謝を高めます。皮膚の再生を促進させる働きのあるフミン酸や、皮膚コンディショニング作用のあるフルボ酸を含んでいることから、美肌効果が抜群なんです。


さすがユコㇿカムイ……まさに天然の化粧水ですね!

画像提供:界 ポロト

△湯に入ると、まずはその建築の妙に魅せられます。決して華美ではないけれど、コンパクトにまとまった過不足ない様式美。

旅の疲れを癒すように、白老温泉特有のモール温泉に身体を浸す。その感触は初めて出会う湯質で、肌に馴染むとろみが新鮮です。心なしか、お肌もいっきにしっとりしてきた気がしてきます。これがフミン酸とフルボ酸の効能……!

画像提供:界 ポロト

露天風呂に出てみると、眼前にぱっと広がるパノラマに一瞬どこまでが浴槽か見失います。ただでさえ境目の無いインフィニティ露天風呂なことに加え、この日は霧雨が優しく降りしきる幻想的な空模様。まるでポロト湖の全てが露天風呂かと錯覚するほど、素晴らしい温泉体験でした。

朝靄の中、夕陽の沈みゆく刻、星空の下。どんな時間に入っても、きっと最高の温泉体験ができるのが△湯なのですね。

温泉いろはに参加すると貰える、「ご朱印帳」ならぬ「お湯印帳」。温泉旅館ブランドらしく、界で温泉に入るとお湯印を押印してもらえます。このためだけに界巡りをしたくなる仕掛け、コレクター欲が程よく刺激されます。

ご当地楽「イケマと花香の魔除けづくり」でアイヌ民族の自然観に触れる


温泉旅館 界の特徴の一つに 「ご当地楽(ごとうちがく)」があります。その地域特有の伝統工芸を体験型のアクティビティとして楽しめるのですが、界 ポロトのご当地楽は「イケマと花香の魔除けづくり」体験です。


全国各地の界を訪れる動機にもなりますよね。ラグジュアリーな旅館に泊まって、なおかつ地域特有の要素に触れることができるのって、すごく魅力的です。


そうなんです。ちなみに界 ポロトに現在いるスタッフの中には、界 津軽にいて津軽三味線を弾けるスタッフもおりますし、私は界 箱根で寄木細工のからくり箱を担当していました。


凄い!それぞれの地域の魅力の粋を体験できる界のコンセプト、本当に大好きです!

ポロト湖を望む囲炉裏の前で体験する「イケマと花香の魔除けづくり」に参加します。アイヌ民族が魔除けとして日常的に身に着けていたお守りを自分の手で作ります。

まずはアイヌ文様の印刷された紙を六角形に折っていきます。意外と複雑な折り方なので、気を抜くと見失うことも。しっかりと集中してお話を聞きましょう。

紙を折ったら、一度開いて中に魔除けになる植物を入れていきます。イケマは土のような香りのする独特な植物で、自然界すべてのものに神が宿ると考え自然と共生してきたアイヌ民族にとって、悪いものを遠ざける効果があるとされています。

さらに色鮮やかなハーブを自分の感性の導くままに選びます。上から、青色のコーンフラワー、緑色の白樺、そしてオレンジ色のカレンデュラ。

最後に想いを込めた袋を、モール温泉で茶褐色に染め上げたオリジナルの紐で閉じて完成です。

アイヌ民族は夢も大事にしていたと言います。今日の宿泊から枕元に置いて寝眠りにつけば、イケマの効果でリラックスした気持ちで眠れるかもしれませんね。

地域の食にこだわった「王道なのに新しい」会席料理

モール温泉に浸かってリラックスし、アイヌ民族の自然観に触れるご当地楽を楽しんだ後は、シェフがこだわり抜いた特別会席を堪能します。

日本全国の界で提供している「ご当地先付」から。界 ポロトのご当地先付は、イクラとキャビアの上品な旨味が馬鈴薯と渾然一体となった「馬鈴薯海宝盛り 山わさび」。

特別会席の楽しみは料理だけではありません。まるで器を運んできてくれたかのように添えられた羆(ひぐま)の置き物。よくよく見比べてみると、色も体型もそして表情も、一つ一つ個性があるのが可愛らしいですね。

料理の合間には、爽やかな風味の赤紫蘇ドリンクを。次に運ばれてくる料理に胸を弾ませ、家族やパートナーと他愛のない会話をする時間って幸せです。

アイヌ民族が交易の際に使用していた丸木舟。その舟をモチーフにした宝楽盛の豪華さは圧倒的です。どれを食べても「おいしい!」しか出てこないし、満面の笑顔が止まりません。

安易な賞賛の言葉なんて憚られるくらいの感動なのですが、本当に「おいしい!」以外に言えません。

旅先では、その土地特有の滋味を感じる「地のもの」を食べることが楽しいものですよね。この丸木舟に並んだ新鮮な海の幸は、旅情をさらに盛り上げてくれます。雑味のない雲丹(うに)の香りや歯応え抜群の海鼠(なまこ)は本当においしく、あわせて北海道の地酒やワインをいただくのは至上の贅沢だと感じます。

初めての味覚体験の余韻に浸っていると、特別会席の〆として「毛蟹と帆立貝の醍醐鍋(だいごなべ)」の準備が始まります。ひときわ輝いている具材たち。毛蟹、帆立、鮭など北海道の海鮮の代表格に、旨味が凝縮したブイヤベースを注いで火を入れます。

特に示し合わせたわけではないけれど、藤野さんと時折り目が合って微笑みを交わします。「これはもう勝ちを確信した笑みですよね」。そう言ってスマートに最後の仕上げをしてくれる藤野さん。

醍醐鍋に火が入っていくにつれて、自分の意思とは無関係にさらにニヤニヤが止まらなくなってきます。窓に映ったそんな緩みきった表情に気が付いて、ちょっと気恥ずかしい心地に。もはや私の脳内は、醍醐鍋による支配に抗うことができないのです。

ふわりとたち昇る海鮮の旨味が濃厚なチーズと出会ったときに発する香りは、自分が想像できる範疇を軽く超えてきます。「これは絶対においしくなる組み合わせでしょ!」の掛算の桁が違い過ぎます。

チーズの和名を指す「醍醐」。この醍醐鍋はチーズを食材として使うことをもちろん意味していますが、特別会席の醍醐味であり、界 ポロトの醍醐味であり、北海道の旅をさらに特別に彩ってくれる醍醐味でもあるんだな……と、心に深く沁みる一杯でした。

ポロト湖の懐にひたり、アイヌ文化との共生を感じる旅を

「アイヌ文化を尊重し、異なる民族との共生を体験できる」界 ポロトのコンセプト。宿の建築はもちろん、食事にも温泉にも、そして迎えてくれるスタッフの方々にもしっかりと息づいています。感嘆に次ぐ感嘆で、地域らしさ北海道らしさをしっかり体現した上でなおかつ新しい、ぐっと心を鷲掴みにされるような体験の連続でした。

北海道旅行の目的地として「ウポポイ(民族共生象徴空間)」を心ゆくまで楽しむ。そして隣接した界 ポロトに滞在し、アイヌ文化との共生を感じる旅をしてみてはいかがでしょうか。

界 ポロト 施設情報・アクセス

公式サイト
https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaiporoto/

所在地
059-0902 北海道白老郡白老町若草町1-1018-94

交通アクセス
札幌駅からJRでおよそ60分
新千歳空港からJRでおよそ40分
JR白老駅(北口)より徒歩約10分

 

取材・撮影・執筆:旅路編集工房 池田 優
一部写真提供:界 ポロト