鹿児島県

鹿児島県歴史・美術センター黎明館

鹿児島の歴史、文化遺産に対する県民の理解と認識を深め、その文化活動及び学術研究に寄与するための施設。歴史民俗、美術・工芸に関わる貴重な文化遺産を約18万点収蔵しており、常設展示では約3千点を入れ替えながら展示しています。

鹿児島県歴史・美術センター黎明館に行ってきた!

黎明館は鹿児島の歴史民俗、美術・工芸に関する貴重な文化遺産を約18万点収蔵しており、常設展示では約3千点を入れ替えながら展示しています。入館料は400円、年間パスポートが800円。この記事では、黎明館の展示内容や併設の喫茶室などを紹介します。


黎明館は、鹿児島の歴史や民俗、美術に関する豊富な展示を行っている博物館です。鹿児島は多くの魅力的な観光スポットがありますが、今につながる歴史や文化を学べる黎明館に訪れることで、鹿児島を見る視点が深まり鹿児島観光がもっと楽しくなるはずです。

例えば、

南北600キロに広がる鹿児島。その自然や文化の多様性を各地の民俗文化から感じ取ったり

鹿児島の歴史を知る上で欠かせない島津家。そもそもどのように成立して発展してきたのか、文書と資料からたどっていくことができます。

南九州最大の繁華街・天文館がにぎわい始めた大正当時の様子をジオラマで楽しめます。

館内をまわって疲れたら、喫茶室でスイーツと飲み物でひと息入れられるのもうれしい!

入館料は400円ですが、年間パスポートが800円とお手頃価格なのが魅力。所蔵点数は約18万点にものぼり、常設展示では約3千点を入れ替えながら展示しているので、2~3カ月おきに訪れると少し違った展示内容を見られます。何度も通って鹿児島への理解を深めたい場所です。

大幅なリニューアルも行われており、2019(令和元)年には、2階部門別展示室(歴史)がリニューアルされて、明治維新や明治の産業革命に関する展示が充実しました。

それでは、黎明館の展示内容や併設の喫茶室などについて紹介していきましょう。

黎明館の入り口にある御楼門(ごろうもん)。明治時代に火災で失われましたが、官民連携による取り組みの結果、令和2(2020)年に147年ぶりに再建されました

 

石垣のまわりにはお堀があり、夏の頃になると蓮が咲いています

 

南北600キロメートルに広がる鹿児島を体感

受付から順路に従って進むと、最初に「鹿児島の自然風景」コーナーがあります。床が鹿児島のミニチュア地図になっており、最南端の与論島から最北端の獅子島まで南北600キロメートルに渡って広がる鹿児島が再現されています。

歩いて上から眺めることで改めて鹿児島のスケールを体感でき、島々が連なる鹿児島の土地の特色がよくわかりました。

 

水深もわかりやすい! 錦江湾(鹿児島湾)が意外と深いです

 

自然環境も多様で、小宝島以南の島々は珊瑚礁が発達した風景が広がっています。入り口には、沖永良部島の鍾乳洞の模型が展示

 

古代から現代までの鹿児島の歴史を学ぶ

続いて1階は、鹿児島の歴史を知るコーナーです。

「先史・古代のかごしま」「中世のかごしま」「近世のかごしま」「近・現代のかごしま」と、4つの年代に分けて鹿児島の歴史を紹介・展示しています。教科書で学ぶ日本の歴史とは少し違い、より鹿児島視点からの歴史を知ることができます。

鹿児島の歴史を知る上で、欠かせないのは島津家の存在。NHK大河ドラマ『西郷どん』でも登場した名君・島津斉彬や、関ケ原の戦いの「島津の敵中突破」で知られる島津義弘などの存在は、歴史好き以外にも広く知られているでしょう。

そんな島津家がどのように成立して発展してきたのか。また一時期は九州統一を目前にした様子など、展示資料や紹介文で教えてくれます。

少し難しいテーマは、理解の助けになるように、映像を用いて解説してくれるタッチパネルがあります。見たい説明を選んで聞くことができます。

大正初期の天文館の様子

「近・現代のかごしま」は、現在に近い鹿児島の様子がわかってとても興味深いコーナーです。鹿児島の天文館は、現在南九州最大の繁華街として知られていますが、大正の始めに活動写真館(映画館)ができたことが賑わっていくきっかけでした。こちらのジオラマは、黎明館の学芸員さんが当時の様子を詳しく調べて再現しています。

店の看板なども細かく再現されていて、見ていて飽きません

鹿児島の民俗と明治維新のコーナー

2階は「鹿児島の民俗」と「明治維新」関連の展示があります。まずは民俗から紹介。

奇祭・鬼追い祭

九州の最南端にある鹿児島は、昔から琉球や中国、朝鮮、アジア諸国といった海の向こう側の国々と交流する玄関口でもありました。文化の交わりの影響を受けて日本列島の中でも特徴のある地域性を形成しており、各地の祭りや民俗文化にはそれぞれの特色が色濃く反映されています。

そうした鹿児島の文化の特質を豊富な民俗資料で紹介しているコーナーです。

ユネスコの無形文化財に登録された甑島のトシドン、薩摩硫黄島のメンドン、悪石島のボゼといった来訪神などの展示。これらの仮面や衣装を纏い、災厄をはらう民俗行事が行われています。

色鮮やかで独特な民俗文化は、見ているだけでワクワクします。

稲作の豊穣を願って建立された県内各地の田の神様(たのかんさあ)の展示も

 

「明治維新」関連のコーナーは、2019(令和元)年にリニューアルされました。

薩摩藩がどのように日本の近代化に貢献したのか? 鹿児島の偉人達や薩摩藩について、また近代化への具体的な取り組みの紹介を通じて紐解きます。英知の詰まった技術力に驚くばかりです。

絵画や工芸品の展示も多数

黎明館3階には絵画や工芸品も多数展示。鹿児島ゆかりの郷土画家のコーナーの絵画は2~3カ月に一回総入れ替えされ、訪れるたびに違う絵画を見られます。

特に有名なのは、黒田清輝の「赤き衣を着たる女」。黒田清輝は鹿児島出身の画家で、明治時代に渡仏、西洋絵画を学んで帰国して豊かな色彩表現の作品を発表しました。

薩摩焼の展示コーナー

薩摩焼の精巧なつくりや絵付けの美しさにうっとりしました。

さつま刀の展示コーナー。鹿児島県唯一の国宝「太刀 銘 国宗」も保管しており、年に二回期間限定で公開されます

最近では刀剣ブームの影響で日本刀への興味が高まっているようです。こうして展示されているのを眺めていると、刃の反り方や刃の輝きが美しく、実用面だけでなく芸術品としての側面もあることが伝わってきました。

年に3~4回の企画展開催

企画展のコーナー

黎明館では常設展示に加えて、年に3~4回企画展が開催されます。学芸員の方が持ち回りで担当しており、取り扱うテーマや時代は担当する学芸員の考えや興味が色濃く反映されるそう。

企画展はこちらのページからチェックできます。

CHIN JUKAN POTTERY 喫茶室

さて、ひととおり黎明館を見て回ったら、「CHIN JUKAN POTTERY 喫茶室」でひと息入れてはいかがでしょう?

「CHIN JUKAN POTTERY」は鹿児島を代表する歴史ある窯元・沈壽官窯と、オリジナル家具や雑貨の製造や建築物の設計・施工を手掛けるデザイン会社・ランドスケーププロダクツが共同制作する陶器のシリーズです。そんな「CHIN JUKAN POTTERY」の陶器を使った喫茶室が「CHIN JUKAN POTTERY 喫茶室」です。

喫茶室内は陶器の販売も

 

懐かしいたぬきケーキもあります!

提供するものは鹿児島のスイーツや飲み物です。飲み物はけせん茶、薩摩紅茶、指宿温泉サイダーなどいろいろ。大きな窓の明るい光が差し込む店内は、館内散策後の一休みにぴったりです。

さいごに

黎明館は、鹿児島の歴史民俗、美術、工芸に関わる貴重な文化遺産約18万点(展示は常時3千点程度)を通して、文化遺産や郷土に対する県民の理解と認識を高め、文化活動や学術研究に寄与すべく運営されています。「後世に残すこと」を一つの使命としており、適切な管理をした展示を行い、また極めて貴重な資料や傷みやすい資料はレプリカを作って展示しています。

鹿児島の歴史文化や民族、美術と見ごたえのある展示が盛りだくさんの黎明館。おいしいスイーツと飲み物のある喫茶室も併設されており、一日のんびり過ごせる場所です。鹿児島観光の際はぜひ訪れてみてください。

黎明館 施設詳細

・住所
鹿児島県鹿児島市城山町7番2号

・電話番号
099-222-5100

・開館時間
9:00~18:00(入館は17:30まで)

・定休日
月曜(祝日の場合は翌日)、毎月25日(土日の場合は開館)、12月31日~1月2日

・入館料
一般400円、高校生・大学生250円、小学生・中学生150円
※団体割引あり

・アクセス
JR鹿児島中央駅から「鹿児島駅前」行きの市電に乗車。「市役所前」下車、徒歩約5分です。
JR鹿児島中央駅からバス・カゴシマシティビューに乗車、「薩摩義士碑前」下車すぐ

サイト:https://www.pref.kagoshima.jp/reimeikan/
Twitter: https://twitter.com/official_reimei

 

取材・執筆:ちえ