猿島
猿島は横須賀市にある自然豊かな無人島。旧日本軍が要塞として使用していたレンガ造りの建物がほぼ無傷で残っている貴重なスポットです。散策はもちろん、釣りやBBQなどのアクティビティも楽しめます。
東京湾最大の無人島・猿島をガイドさんと一周してきた
東京からたったの1時間半で行ける無人島があるのを知っていますか? 横須賀にある無人島・猿島をガイドさんに案内してもらいました!
目次
横須賀市にある東京湾唯一の自然島・猿島。海と森林に囲まれたこの島は、かつて旧日本軍の要塞として作られた建造物がほぼ無傷で残っており、「国史跡」に指定されています。
猿島全体がひとつの公園となっており、一周は徒歩で約60分。自然とレンガ造りの要塞跡が織りなす景色が美しい、人気の観光スポットです。
島内を散策することはもちろん、BBQや釣りなどのレジャーを楽しむこともできます。
猿島へのアクセスは、京急線横須賀中央駅から徒歩15分で三笠ターミナルへ行き、そこから船で片道10分です(三笠ターミナルと船の詳細は記事後半で)。
横須賀中央駅までは新宿から約1時間10分。都心から1時間半ほどで無人島に行けるんですね!
写真中央に見えるのが猿島。
上陸すると、船着き場のすぐ目の前に「猿島ウェルカムセンター」があります。島へ来るお客さんがいない日でも、9時30分にはスタッフが開店準備をするそうです。
ここで、ガイドと一緒に猿島のダイジェストをめぐる「猿島探検ツアー」に申し込むことができます(1人600円)。ツアーは約30分で、予約制ではなく当日受付のみ。参加者がひとりだけでも開催されます。
今日は無人島・猿島の魅力をガイドの水上さんに紹介していただきます。
水上さんは2019年に探検ツアーを立ち上げたときから携わっており、横須賀ガイド歴は10年以上。出身も横須賀で、地元の歴史と文化に詳しい頼れるガイドさんです。
自然と歴史を感じる、猿島の要塞跡
林の中の要塞跡は木々が鬱蒼と生い茂り、小鳥の鳴き声が耳に心地よく響きます。
すごく非日常的な景色ですね! 都会の喧騒から離れてリフレッシュできそうです。
そこが猿島の魅力です。ここは、明治20年頃に日本の陸軍が要塞として作ったんですよ。
なぜ猿島に要塞が作られたのでしょう?
東京湾を守るためです。もともとは幕末に、幕府が猿島に大砲を設置しました。だけど大きな地震があって猿島がダメージを受け、幕府は猿島を手放したんです。明治になり、陸軍が要塞として再構築しました。それが今もそのまま残っています。関東大震災でもほとんどダメージがなく、修復もされていません。
この道は人気の撮影スポットで、よくインスタグラムにもアップされています。ちなみに右手のレンガ造りの建物は兵舎と弾薬庫です。
兵舎って、兵隊が住んでいたんですか?
居住はしていません。この建物の上に大砲があり、当直のように交替で見張りをしていたんですね。兵舎は、兵隊が休憩する場所です。
そもそも、明治時代って外国船に向けて大砲を撃つことがよくあったんですか?
それが、ほとんどなかったそうです。ペリーが来て以降は開国しているので外国船を通していましたし、第二次世界大戦が始まったときは飛行機の時代で、船で攻め込まれることはありませんでした。つまり、要塞を作ったのにほとんど使われなかったんです。実戦で使われないまま残った要塞の空き地に、昭和になって海軍が入ってきました。観光地として整備されたのはおよそ30年くらい前です。
ここは、レンガが面白い場所なんですよ。
面白いというと?
道を挟んで左右のレンガを見てください。レンガの積み方が違うんです。片方はフランス積みと呼ばれる積み方で、日本で見られる場所は貴重です。なぜかと言うと、江戸幕府はフランスと友好関係で、幕府と対立していた薩長はイギリスと仲が良かった。幕末から明治初期にかけて、日本ではフランス文化が採用されていたので、レンガもフランス積みでした。
しかし江戸幕府から明治政府に代わり、だんだんとイギリス文化が入ってきて、その後はすべてイギリス積みになりました。そのため反対側のレンガはイギリス積み。ここは、フランス積みとイギリス積みを見比べられる貴重な場所なんです。
言われないとわからないですね。そういったお話を聞きながら歩くと、より興味深いです。
ここが、明治17年に完成したレンガのトンネルです。全長90メートルで、向こう側から来た敵に見つかりにくいよう、途中から坂になっています。※諸説あり
その先にもレンガ造りのトンネルが。
ここはもともと弾薬庫の中で、海側に早く行けるよう海軍がトンネルに改造しました。ちょうどここを境に、手前は明治、この先は昭和に作られています。明治と昭和が隣り合う、時代の境界線のような場所です。
ここにひみつのポイントがあります。この扉の隙間から上を覗いてみてください。
あ、光が差している。穴が開いていて空が見えます。
実はここ、大砲の弾の通り道だったんです。大砲が上にあって、ここから井戸のように滑車で弾を上げていました。
ここが砲台跡、昭和の砲座です。真ん中の円に大砲を設置し、砲座の周囲の溝に弾を置いていました。
砲台跡からアップダウンのある道を経て、猿島の突端・オイモノ鼻広場へ。ぐるりと海を見渡すことができます。
階段を下りると磯に出ます。急なので、歩きやすい靴で来るのがおすすめです。
この磯場では、釣りや磯遊びをする人が多いのだとか。※一部立入禁止の場所があります。
水の透明度が高く、水中にいろいろな生き物が見えます。岩に腰かけ、波をぼんやり眺めるだけでも癒されそうです。
オイモノ鼻広場から林の中を歩き、小さな展望台のある広場へ。
昔は、展望台の上で海軍が飛行機を見張っていたと言われています。残念ながら、現在は展望台の上に登ることはできません。
青々とした植物の向こうに、海と街が見えます。
ここから、横浜や東京も見えますよ。日によってはスカイツリーも見ることができます。
ところで、猿島の名前の由来は?
猿がいたから……であれば説明しやすいけどそうではなくて(笑)。鎌倉時代に日蓮上人というお坊さんがいたんですが、船に乗っていたところ嵐に見舞われて小さな島に避難しました。すると、白い猿が現れて島の奥に案内したそうです。それで「猿島」になった、という説がありますね。もちろん真偽は不明ですが。
道具はレンタルで! ビーチで手ぶらBBQ
猿島を一周し、入口にあるビーチに戻ってきました。
ここでは釣りやBBQを楽しむことができます。コロナ禍前は海水浴客も多く訪れていたそうです。※2021年度の海水浴場は閉鎖。
こちらのレンタルショップでは、釣り竿やBBQ道具を借りることができます。
横須賀市の条例により、猿島にはコンロなど火気の持込みはできません。なので、BBQをする方はこちらでレンタルしてください。閉店が15時30分なので、それまでに返却すれば何時間でもご使用いただけます。
食材以外は手ぶらでOKってことですね。飲み物は島で買えますか?
レンタルショップの隣の「オーシャンズキッチン」や自動販売機でも購入できますし、持ってきていただいても大丈夫です。
猿島レンタルショップ
・営業日 猿島航路運航時は毎日
・営業時間 10:00~15:30
BBQレンタルの予約はこちら
猿島って、キャンプはできるんですか?
いいえ、宿泊はできません。
たとえば、急な悪天候で帰りの船が運航しないとか、帰りの船に乗り遅れて島に取り残されてしまうなんてことは?
船はよっぽどのことがない限り運航するので大丈夫です。三笠ターミナル側でも猿島側でも乗船した人数を確認しているので、取り残される心配もありません。万が一のときはデッキに緊急ボタンがあるので、それを押せばスタッフが迎えに行きます。
それを聞いて安心しました……!
どうやら無人島に取り残される心配は無用のようです。だけど、帰りの船には乗り遅れないよう気をつけてくださいね。
海を眺めながらランチ「猿島オーシャンズキッチン」
こちらはテイクアウト専門のレストラン「猿島オーシャンズキッチン」。
上階がデッキになっていて、海風を感じながら食事ができます。帰りの船を待つのにも最適な場所です。
名物は、地元・横須賀の食材にこだわった「猿島揚げ」。
他には、横須賀の地ビール「猿島ビール」もおすすめです。生で飲めるお店は2店舗しかなくて、そのうちの1つがこのオーシャンズキッチンなんですよ。※アルコールの販売は条例に従っております。販売していないときもありますのでご了承ください。
猿島オーシャンズキッチン
・営業日 猿島航路運航時は毎日
・営業時間 11:00~16:00
三笠ターミナル&猿島行きの船
猿島を堪能し、船で三笠ターミナルへ戻ってきました。
最後は三笠ターミナルと、猿島行きの船についてご紹介します。
三笠ターミナルの中は、1階がチケットターミナル&観光案内所。2階は猿島ビジターセンターで、猿島の写真を展示したスペースとなっています。
奥のカウンターで、猿島航路の乗船チケットを購入できます。
料金は大人1400円・小学生700円(小学生未満は無料)。船は、台風などよほどの悪天候でない限り毎日運航しています。時刻表はこちら。
観光案内所はお土産売り場も兼ねていて、特に横須賀名物のカレーが充実。猿島の帰りにここでお土産を買っていくのがおすすめです。
三笠ターミナル/猿島ビジターセンター
・営業日 年中無休(航路欠航時も原則開店)
・営業時間 9:00~16:30
ぜひ来てほしい! 猿島の魅力
さいごに、水上さんにとって猿島のいちばんの魅力はなんですか?
手つかずの自然と軍事施設がそのまま保管され、調和しているところです。歴史的建造物に興味がある方はもちろん、要塞跡のことを知らずにBBQや磯遊びに来た方も、せっかくだからと島内を散策していく。すると「これはなんだろう?」と歴史に興味を持つなど、学びのきっかけになります。大人も子供も楽しめる島なので、ぜひ遊びに来てみてください!
都心からわずか2時間弱で行ける大自然・猿島。都会にお疲れの方は、海と緑に囲まれた非日常的な空間でリフレッシュしてみては?
無人島・猿島 施設詳細、アクセス
○公式サイト https://www.tryangle-web.com/sarushima/
○猿島航路
・運航時刻 猿島行き 9:30/帰り 17:00
・乗船料(往復) 大人1,400円/小学生700円/小学生未満無料
※横須賀市民の方は乗船料半額(身分証をお持ちください)
○猿島公園入園料
・15歳以上(中学生除く)200円
・小・中学生 100円
アクセス
三笠ターミナルから船で10分。
<三笠ターミナルへ電車で行く場合>
京急線横須賀中央駅から徒歩15分
<三笠ターミナルへ電車で行く場合>
「横浜横須賀道路」横須賀I.C.より「本町山中有料道路」を通って約10分。周辺に有料駐車場あり。
三笠公園駐車場(カーナビ入力住所):横須賀市小川町27-10
取材・執筆:吉玉サキ