ホテル雅叙園東京
本の中に入り込める!?「大正ロマン×百段階段」展で文学作品の世界を体験してみた
目黒の「ホテル雅叙園東京」で、企画展「大正ロマン×百段階段 ~文豪が誘うノスタルジックの世界~」が2023年6月11日(日)まで開催中! きらびやかな東京都指定有形文化財「百段階段」で、文学作品の世界に入り込むことができます。
目次
東京・目黒のミュージアムホテル「ホテル雅叙園東京」で2023年6月12日(日)まで、昨年好評だった「大正ロマン×百段階段」展の第2弾コラボレーションが開催中です!
舞台となるのはホテル内の東京都指定有形文化財「百段階段」。定期的に日本文化に触れられる多彩な企画展を開催しています。
今回のテーマは「文豪」。絢爛豪華な文化財に6つの文学作品の世界が現れます。
現代の人気イラストレーターが文豪の作品に自由な感性でイラストを添える『乙女の本棚』(立東舎)シリーズとのコラボレーション企画です。
作品の世界観を表現した美しいイラスト、リアリティのある立体展示、雰囲気抜群のBGMによる演出で、まるで自分が作品の中に入り込むような体験ができます。
展示の最後には「大正ロマン」をイメージしたレトロかわいいフォトスポットも登場!
いろんな要素で楽しめる「大正ロマン×百段階段 ~文豪が誘うノスタルジックの世界~」で、文学作品の世界に浸ってきました。
6つの文学作品の世界に飛び込もう
イベントの舞台は「ホテル雅叙園東京」内にある文化財「百段階段」。1935(昭和10)年に完成した、館内に残る唯一の木造建築です。
99段の階段廊下は、かつて「昭和の竜宮城」と呼ばれるほど絢爛豪華な装飾が施された7つの部屋をつないでいます。
今回のイベントでは、そんな昭和初期の面影が残る文化財「百段階段」で、谷崎潤一郎、泉鏡花、太宰治などの文豪たちが手掛けた6つの作品の世界を体感できます。
階段を上がるたび、どんな世界が待っているのかワクワクが止まりません!
十畝(じっぽ)の間 萩原 朔太郎+しきみ 『猫町』
ひとつめの部屋「十畝(じっぽ)の間」は、「日本近代詩の父」と呼ばれる萩原朔太郎が手掛けた小説『猫町』をテーマにした展示です。
『猫町』は文化財「百段階段」が完成した年と同じ1935(昭和10)年に発表された作品のため、展示の始まりを飾る作品として選ばれました。
『猫町』の世界観を描くイラストレーターは「しきみ」さん。入り口に飾られた大きな猫のイラストに誘われて、部屋の中へと入ります。
部屋に一歩入るとメルヘンチックな音楽が流れていて、一気に物語の世界へと引き込まれます!
『猫町』は、主人公が旅先で迷い込んだ美しくてどこか不思議な町をテーマにした作品。「十畝の間」の展示は、主人公が迷い込んだ町をイメージしています。
町の中には、こんなにかわいらしい喫茶店も。展示されている衣装のコーディネートは、昨年に続き、舞台衣装で有名な「松竹衣裳」が手掛けています。レトロな雰囲気がとてもおしゃれ!
喫茶店のスペースはフォトスポットになっているので、物語の主人公になりきって写真を撮ってみましょう。
そんな美しい町を歩いている主人公ですが、物語の後半、ふとした瞬間に美しい町がなぜか「猫だらけ」に!
展示でも、突然猫の大群が現れて驚きます。猫はかわいいけれど、これだけの数がいるとちょっと奇妙……。「この町は一体何なの!?」と、主人公の不思議な感覚をリアルに体感することができました。
ちなみに今回の企画では、各部屋に物語とイラストが描かれたパネルがあり、それを読み進めることでストーリをたどりながら展示を楽しむことができます。「原作を読んだことがない」という方でもご安心を!
漁樵(ぎょしょう)の間 中島 敦+ねこ助 『山月記』
2つめの部屋「漁樵(ぎょしょう)の間」は、中島敦による中国を舞台にした小説『山月記』と、イラストレーターの「ねこ助」さんによるコラボ。『山月記』といえば国語の教材として使われている作品なので、なじみのある人もいるのでは?
部屋に入ると、ひとつめの『猫町』とはまったく違った幻想的な空間が現れました。夜明け前の薄暗い竹林を表現した空間は、『山月記』に登場する役人の袁傪(えんさん)が、かつて親友だった李徴(りちょう)と再会する場所。
部屋の装飾や音楽と相まって、本当に竹林の中をさまよっている感覚を味わえます。
竹林の中にはところどころに鏡が貼られているのですが、これは自分の人生を後悔する李徴の姿を受けて「来場者が自分自身の姿を映してほしい」というメッセージが込められているそう。思わずドキッとしてしまいました。
物語を最後まで読み進めると、BGMの終わりに聞こえてくる虎の遠吠えがとても切なく感じられます……。
草丘の間 太宰 治+紗久楽さわ 『葉桜と魔笛』
3つめの部屋「草丘の間」は、『走れメロス』や『人間失格』で広く知られる太宰治の短編小説『葉桜と魔笛』と、イラストレーターの「紗久楽 さわ」さんによるコラボです。
『葉桜と魔笛』は、一緒に暮らす姉妹が体験した不思議な一夜の出来事をテーマにした物語。窓から外を眺める姉と、本を読む妹を表現した展示を見ていると、二人の静かな暮らしが想像できます。
静水の間 小川 未明+げみ 『月夜とめがね』
3つめの部屋「静水の間」は、「日本のアンデルセン」と呼ばれた小説家・児童文学作家の小川 未明が手掛けた『月夜とめがね』がテーマです。コラボしたイラストレーターは「げみ」さん。
部屋で針仕事をするおばあさんと、月のきれいな明るい夜に訪ねてきた二人の訪問者との物語です。
『月夜とめがね』のおとぎ話のような世界観が、こぢんまりとした「静水の間」の雰囲気にぴったりとマッチしていました。
星光の間 泉 鏡花+ホノジロトヲジ 『外科室』
「静水の間」から続く廊下を奥へ進むと、「診察室」と書かれた看板を発見。看板が示す先は、4つめの部屋「星光の間」です。
展示のテーマは泉鏡花の『外科室』で、今回の6作品の中では最も古い作品です。イラストレーターは「ホノジロトヲジ」さん。
『外科室』は、題名の通り手術室で展開される物語のため、手術中の医者たちの影や、摩訶不思議な色をした麻酔薬など、病院をイメージした展示になっています。リアリティを出すため照明もほかの部屋より白っぽくしているんだそう。細かなこだわりがすごい!
物語は、身分違いの二人による恋物語。ストーリーを辿っていくと、あまりにも切ない展開に「究極の片思いってこういうことかな?」なんて思ってしまいました。
清方の間 谷崎 潤一郎+マツオヒロミ 『秘密』
展示の最後を飾る6つめの部屋「清方の間」は、谷崎 潤一郎の短編小説『秘密』がテーマとなっています。昨年の「大正ロマン×百段階段」展でもコラボレーションしたイラストレーター、マツオヒロミさんが描く妖艶な女性のイラストが印象的です。
『秘密』という小説は、刺激を求めて夜な夜な女装をして出歩く主人公がある夜、昔交際していた女性と再会。そこから彼女との秘密の逢い引きが始まるという、ちょっと大人なストーリーです。
展示では、二人が逢い引きを重ねる部屋を再現。妖しい雰囲気のBGMも合わさり、まるで二人の「秘密」をのぞいているかのような感覚に。二人の秘密はいつか明かされるのでしょうか? 気になる人は、ぜひ実際に足を運んで展示を見てみてくださいね。
6作品の展示は、それぞれ世界観がまったく異なるため、部屋に入るたび違った感覚を味わえるのがとても新鮮でした!
「大正ロマン」を感じるフォトスポットも
99段の階段廊下を上がった先にあるのが、7つめの部屋「頂上の間」です。この部屋では今回の企画展とコラボレーションした『乙女の本棚』シリーズの紹介や、「大正ロマン」をイメージしたレトロでかわいいフォトスポットが用意されています。
レトロなアンティークを眺めていると、まるでタイムスリップしたような気分に!
着物や大正レトロな洋服を着て写真を撮れば、モダンな一枚が撮れそうです。
今回のイベントテーマを思わせる書斎風のフォトスポットも。展示を楽しんだあとは、自分も文豪になりきってみましょう。
『乙女の本棚』が手に入るミュージアムショップ
イベントの最後には、お土産が販売されている「ミュージアムショップ」に立ち寄ってみました。
今回、文化財「百段階段」とコラボレーションしていた『乙女の本棚』シリーズがずらりと揃っていました!
イベントを満喫したあとは『乙女の本棚』シリーズに興味津々。気に入った作品があれば、自宅でも楽しんでみてくださいね。
「大正ロマン×百段階段 ~文豪が誘うノスタルジックの世界~」は、文学の知識がなくても作品の世界に没入できるイベントでした。イラスト、立体展示、衣裳、音楽など、展示の細部にわたるまで物語の世界観が詰め込まれているので、じっくりと浸ってみてください!
取材・執筆:稲垣恵美
イベント情報
- 開催日
- 2023/03/25 ~ 2023/06/12
- 開催時間
- 11:30~18:00(最終入館17:30)
- 会場名
- ホテル雅叙園東京
- 会場場所
- 東京都目黒区下目黒1-8-1
- チケット
- 一般/1200円(土日祝 1500円)
学生/600円(土日祝 800円)
未就学児無料