神奈川県

鈴廣かまぼこ博物館

小田原の「鈴廣かまぼこの里」内にある博物館。「つくる、食す、知る」をモットーに、さまざまな仕掛けで遊びながらかまぼこのヒミツを学べます。職人指導のもと、かまぼこ作りやちくわ作りを体験することも。これであなたもかまぼこ博士!

かまぼことちくわの手づくり体験ができる!鈴廣かまぼこ博物館に行ってみた

創業150年以上の老舗かまぼこ店・鈴廣が手掛ける「鈴廣かまぼこ博物館」で、かまぼこ作りとちくわ作りに挑戦してきました! はたして、不器用でもちゃんと作れるのでしょうか……?


突然ですが、みなさんは「かまぼこ」のことをどれくらい知っていますか? 日本人にとって、古くから身近な食材。ですが、その製法や原材料について知る人は意外と少ないのかもしれません。

そんなかまぼこについて深く学べるのが「鈴廣かまぼこ博物館」。小田原の老舗かまぼこ店「鈴廣」が手掛ける博物館です。

映像技術やさまざまな仕掛けでかまぼこ作りを疑似体験したり……

職人さんの指導のもと、かまぼこやちくわ作りを体験したり……

自分で作った焼きたてアツアツのちくわを食べたり!

「つくる、食す、知る」をテーマに、かまぼこの歴史や作り方、おいしさのヒミツについて遊びながら学べる博物館です。

場所は箱根登山鉄道「風祭駅」からすぐ。

風祭駅の周辺一帯は鈴廣による「鈴廣かまぼこの里」になっており、かまぼこ博物館もその一角にあります。

「鈴廣かまぼこの里」にはレストランやカフェ、小田原の名産品を買える大きな店舗もあり、かまぼこ博物館を楽しんだあとは食事やショッピングが楽しめます!

今日は、鈴廣広報の酒井さんに案内していただきます。


さっそくですが、酒井さんが思うかまぼこの魅力を教えてください!

かまぼこはとっても健康的な食材です。1本のかまぼこには約7匹のお魚が使われていてたんぱく質が豊富。それだけのお魚を使っていても、製造過程で脂肪分が落ちるからすごくヘルシーなんです。


ダイエット中も安心ですね。

かまぼこにもいろんな種類がありますが、小田原のかまぼこは「日の出型」。日の出を連想させる上に紅白だからおめでたく、おせち料理の定番です。そんな小田原のかまぼこを、ぜひ好きになってほしいですね。

かまぼこの魅力を教えていただいたところで、まずは1Fを案内してもらいましょう!

 

「かまぼこ百科」と「見る工場」

まずやってきたのは「かまぼこ百科」。さまざまな仕掛けや実際に使われていた道具が展示されており、かまぼこの製法や原材料について学べます。

小田原のかまぼこの材料はイシモチという白身魚です。別名をシログチというんですが、これは釣り上げたときブーブーと鳴くのが愚痴を言っているみたいだから。

かつてのかまぼこはちくわに似ていて、武器の鉾(ほこ)にすり身をくっつけて焼いていたんです。それが植物の蒲の穂(がまのほ)に似ていたから「かまぼこ」と呼ばれるようになりました。かまぼこが登場する最古の文献は1115年のもので、それにちなんで11月15日はかまぼこの日なんですよ。


ということは、かまぼこって平安時代からあるんですね。

そうなんです。もともとは焼く製法が主流で、蒸しかまぼこが誕生したのは江戸時代。小田原のかまぼこは蒸しかまぼこです。

こちらは全国のお魚とかまぼこの分布図。地域によってさまざまな種類の魚が獲れるため、たくさんの種類があるのだそう。

小田原は白い板かまぼこが主流ですが、お隣の静岡は黒はんぺんが有名。アジやイワシなど、鉄分の多い材料を使うと色が黒くなるんです。これらのお魚は風味が豊かなので、つみれなどによく使われます。

左は昔の石臼、右は現在の機械の石臼。

水で晒した魚の身を石臼で擂る(する)んですが、だんだん粘りが出るので見た目以上に力がいるんです。昔の石臼は、大人4人がかりで杵を回していました。

こちらは「見る工場」。ガラス越しに職人さんたちの作業の様子を見ることができます。工場はもう一か所あり、ここでは手作業の工程を含む製品を作っているのだとか。

奥の部屋では魚の身を採る「採肉」という作業をしています。血合い肉が入るとかまぼこが白く仕上がらないので、慎重に作業しなければいけません。


かまぼこ職人さんって大変なんですね。

一般的に一人前のかまぼこ職人になるには15年かかると言われています。一流のかまぼこ職人であることを証明する「水産練り製品製造技能士」という国家資格があるんですが、鈴廣には一級技能士がたくさんいるんですよ(※資格を持っていなくてもかまぼこ職人にはなれます)

 

かまぼこ・ちくわ手づくり体験教室

かまぼこの基本を知ったところで、いよいよかまぼこ作りに挑戦! 今回は、板かまぼことちくわを両方作ります。※水曜はちくわのみ。

まずはかまぼこから。かまぼこは「魚の身を採る→水で晒す→石臼で擂る→板につける→蒸す」という工程で作りますが、ここではそのうちの「板につける」作業を体験できます。

教えてくれるのはかまぼこ職人の萩原さん。軽妙なトークで場を和ませながら実演してくれました。

さすがはプロの職人さん!流れるような手つきですり身を練り、あっという間に板につけてしまいました。なんときれいな日の出型……。


こういうのって、上手い人の手つきほど簡単そうに見えるんだよな~。

まずはかまぼこ包丁の持ち方からレクチャー。かまぼこ包丁は刃がないので、お子様も安心して扱えます。

板につける前に、まずは用意されたすり身を潰して練ります。時間が経つと弾力がなくなってしまうため、素早く作業するのがコツなのだとか。

ただ闇雲に練ればいいわけではなく、基本の「練り方」があるのだそう。

左右のストロークですり身を平らにして……

すり身を包丁に乗せてポンと置きます。この作業を繰り返して、すり身を練り上げていきます。


見た目以上にすり身が重くて力が要ります。けっこう大変!

練り上げたら、次はいよいよ板につける作業。すり身を包丁でこそげ取るように集めていき、かまぼこ板に乗せます。

これはかなり難しい!

板の上に乗ることには乗ったんですが、まったく日の出型になりません。萩原さんは一瞬でこんもりした日の出型にしたのに……。

ペタペタと何度も包丁で整え、いびつながらなんとかかまぼこの形に仕上げました。


素早くできなかったから、弾力が失われていないか心配。

かまぼこは蒸したのち冷却され、約70分後に受付カウンターから渡されます。

次はちくわ作り。教えてくれるのは同じくスタッフの若林さんです。

包丁を使って棒に巻きつける製法と、手で棒にくっつける製法があるそう。私は包丁を使ってやってみます。

すり身を練る工程はかまぼこと同じ。練り上げたら、今度は四角く伸ばします。

包丁を使って、竹の棒にすり身を巻きつけていきます。

かまぼこ作りでは苦戦しましたが、意外にも一発で綺麗に巻きつけることができました!


他の参加者さんは「ちくわのほうが難しい」と言っていたけど、私はちくわのほうが簡単でした!

焼き時間は20分ほど。その間は館内を見てまわって……

焼き上がりを知らせるアナウンスがあったので、焼きたてアツアツのちくわをいただきます。出来立てのちくわを食べるのは初めて!


売られているちくわとは香りがぜんぜん違います!
まるで焼き魚を食べているみたい。とっても香ばしくて、お魚の味をしっかり感じます。

作ったかまぼこは、帰宅後に美味しくいただきました。


スーパーで売っているかまぼこよりも柔らかくて、歯触りがプルプルしていました! 心配していた弾力もそれほど失われていなかったと思います。味がついているからそのまま食べてもおいしい!

自分で作ればおいしさもひとしお。みなさんもぜひ、かまぼこ作りとちくわ作りを体験してみてください。

かまぼこ・ちくわ手づくり体験教室の詳細はこちら

 

かまぼこ板絵美術館

2Fは「かまぼこ板絵美術館」。1982年から行っている「小さな美術展 かまぼこ板絵国際コンクール」の入選作品を展示する常設ギャラリーです。一般の方による応募作品と、有名な作家やイラストレーターによる作品を展示しています。

かまぼこ板絵コンクールは過去に16回開催していて、多いときでは1万点以上の応募があるんですよ。一般の方は自分でかまぼこを食べて、板を洗って作品を制作します。


こんな立体的な作品もあるんですね。

かまぼこ板の縦長の形を活かした作品が多く、どれも力作ぞろいです!

イラストレーターの水森亜土さんの作品もありました。かわいい!

 

「かまぼこの科学」と「かまぼこキッチンラボ」

こちらは3Fの「かまぼこの科学」。食事から身体に取り込まれたたんぱく質がどう変化するのか、かまぼこの成分や水についてなど科学的に学べる展示です。

たとえばこれは、かまぼこの製造過程である「水晒し」の工程を説明しています。

小田原のかまぼこは箱根百年水と呼ばれる天然水で作っています。このお水は、カルシウムやミネラルは豊富だけど鉄分は少ないんですね。鉄分が多いとかまぼこが灰褐色になってしまうので、白いかまぼこを作るにはうってつけの水質なんです。

こちらはお好きな具をトッピングしてあげかまを作れる「かまぼこキッチンラボ」。

あげかま作りは1回30分。板かまぼこ・ちくわ作りよりも時間が短いので、特にお子様におすすめです。

あげかま作りは包丁を使いません。すり身を手でこねて作るので、小さなお子様でも大丈夫ですよ。

小さなお子様と一緒にご来館された際は、ぜひあげかま作りを楽しんでみては?

 

ミュージアムショップ

こちらはユニークなかまぼこグッズを購入できるミュージアムショップです。


一番人気があるお土産はどれでしょう?

こちらの「おうちでかまぼこてづくりたいけん」が人気です。すり身がパウダー状になった商品で、おうちでかまぼこ作りを楽しめるんですよ。当館でかまぼこ作りを楽しんだ方が「家でもやりたい!」と購入したり、家族へのお土産に買っていったりしています。

こんなユニークなピアスもありました!


最後にメッセージをお願いします。

かまぼこは小田原の名産品です。鈴廣かまぼこ博物館は小さなお子様から大人の方まで楽しめる場所なので、小田原観光のついでにぜひ遊びに来てください。かまぼこもちくわも、自分で作ると楽しくておいしいですよ!

 

鈴廣かまぼこ博物館 詳細、アクセス

○公式サイト https://www.kamaboko.com/sato/

○営業時間 9:00~17:00

○休館日 1月1日、臨時施設点検日

○料金 無料(一部体験教室・プログラムは有料)

○予約
体験教室・体験プログラムのご予約はこちら

○アクセス
住所:神奈川県小田原市風祭245
 小田原駅より箱根登山鉄道「風祭駅」下車すぐ
電話:0120‐07‐4547(9:00~17:00)

 

取材・執筆:吉玉サキ